2/25 マルレク
【 2/25 マルレク「密度行列 ρ で理解する確率の世界」への招待 】
2月25日 マルレク「密度行列 ρ で理解する確率の世界 -- 意味の分散表現の数理」を開催します。
密度行列については、2021年夏に「密度行列 ρ で理解する量子の世界」というセミナーを開催しました。https://www.marulabo.net/docs/rho-talk/ 今回のセミナーは、その続編です。
2021年のセミナーでは、観測演算子の一般化として POVM(Positive Operator Valued Measurement ) という概念を紹介しました。また、密度行列を別のより単純な密度行列に還元する Partial Trace という操作を定義して、それがエンタングルした複雑な系を理解するのに重要だという話をしました。今回のセミナーでは、これらのトピックスをもう少し掘り下げたいと思います。
2021年のセミナーの舞台は量子の世界でしたが、今回のセミナーの舞台は確率の世界です。
古典的な確率の概念は、20世紀の量子論の成立とともに量子論的な確率の概念に変化するのですが、今回のセミナーでは、古典論的な確率分布概念は量子論的な密度行列という概念に変化したという視点で、両者の対応と差異を見ていきたいと考えています。
主要に依拠したのは、DisCoCatのメンバーとして活躍した Tai-Danae Bradleyの2020年の論文 "At the Interface of Algebra and Statistics" 「代数と統計の境界で」です。 https://arxiv.org/abs/2004.05631
この前までChatGPTやAIの話をしていたのに、なぜ、数学の話になるんだと思われた方もいらっしゃるかもしれません。若干、セミナーの背景を補足させてください。
今回のセミナーは、以前の密度行列のセミナーの続編であるだけでなく、セミナーのサブタイトルの「意味の分散表現の数理」が示しているように、つい先日開催したもう一つのセミナー「AIは意味をどのように扱っているのか? -- ChatGPT の不思議」 https://www.marulabo.net/docs/meaning/ の続編でもあります。
先日のセミナーでも述べたように、丸山は、大規模言語システムを中心とする現代AIの中核技術は「意味の分散表現」という手法の採用だと考えています。
そこでは、興味深い変化が進行中です。それは、意味の分散表現に多次元のベクトルを利用するという現在の実装に代えて、密度行列を利用しようという動きが生まれていることです。
重要なことは、それは、単なる実装方法の見直しではなく、自然言語の確率論的な意味の理解に、古典論的な確率概念ではなく量子論的な確率概念を適用しようという動きに他ならないということです。
この点では、すでに2010年代に自然言語の意味の解釈に量子論のエンタングルメントとの類似の現象が現れることを見出していたBob CoeckeらのDisCoCat「カテゴリー論的構成的分散意味論 Distributional Compositional Categorical Semantics 」の動きは先駆的なものでした。
DisCoCatについては、昨年末のセミナー「ことばと意味の「構成性」について -- カテゴリー論と意味の形式的理論」 https://www.marulabo.net/docs/discocat/ で紹介しています。興味がある方は参照ください。
今回は、時間の制約もあるので、密度行列と言語の意味論との関係はあまりふれられないと思います。それらについては、別のセミナーを考えていきたいと思っています。
https://www.marulabo.net/docs/density2/
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