【 マルレク「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向」予告編 】
#SDLC
5月のマルレクは、「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向」というテーマで開催します。
MaruLaboでは、この間、ソフトウェア開発とAIとの接点について、マルラ・ボエームさんの 「AIエージェント講座」を始めてきました。
今回のセミナーは、この流れを受け継ぐものです。
【 今回のセミナーの二つの直接的なきっかけ 】
今回、「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向」というテーマで、マルレクを開こうと思ったのには、直接的には、二つのきっかけがあります。
最初のきっかけは、5月初めの Metaのザッカーバーグ氏の「今後、18ヶ月でコードの100%をAIが生成する」という発言を目にしたことです。
https://www.ndtv.com/world-news/ai-will-do-most-of-coding-soon-better-than-top-coders-mark-zuckerberg-8311461
「そんな、予測が本当にできるの?」
よく読むと、世の中のコードがそうなるというわけではなく、「MetaのLlamaプロジェクト向けのコードの大部分がAIによって書かれるだろう」という話だったのですが。
ただ、調べてみると他のAIベンダーのビジネス上の発言も、強気なものでした。
もう少し詳しく背景を調べてみようと思いました。
【 攻撃者としてのAI 】
もう一つのきっかけは、4月28日から5月1日まで、サンフランシスコで開催された、RSAC 2025の 栄藤さんのレポートを読んだことです。
「RSAC2025 ルポ(3日目午前の途中速報、Exhibition巡りはこれから)」
https://note.com/mick_etoh/n/neb6bae3782b7
衝撃を受けました。
論点は多岐にわたるのですが、「AIが攻撃者になれば、セキュリティの最大の敵はAiになるだろう。その時、人間は勝てるだろうか?」という危機意識を多くの人が抱いていることは理解できました。
【 二つのトレンドをどう考えるか?】
問題は、この間僕が強い印象を受けた二つのトレンドが向いてる、方向が必ずしも一致しているわけではないということです。むしろ、反対の方向を向いているようにさえ見えます。
一方には、Code生成能力の飛躍的拡大を基礎とするAIに対する期待の高まりがあり、他方には、AIの利用拡大が新しい脅威を生み出すという危機感があるわけですから。
ただ、対立だけが進んでいるわけではありません。AIベンダーだけでなく、研究者コミュニティも、また、切り口は違いますがセキュリティ・コミュニティも、共通の問題意識を持ち始めつつあることは、興味深いことだと思います。
【 問題意識の広がりとそのフォーカス 】
それは、問題解決の鍵は、人間がキチンとコントロールできる、正確で安全なAIに統合されたソフトウェア開発サイクルを構築できるかどうかにあるという問題意識の広がりです。
共通の現実が共通の問題意識を生み出すというのは、ある意味で当然のことです。ただし、問題意識を持つことと問題を解決することは別のことです。また、同じ問題意識が全く異なる解決方法を導くこともあり得ますし。ある日問題が解けないことに気づくかもしれません
ここでは、共通の問題意識のフォーカスが、「ソフトウェア開発サイクル」に向かっていることが大きな意味を持っていると思います。
【 ソフトウェア開発でのAI利用の動向 】
今回のセミナーでは、Part 1で、AIベンダーが活発に展開しているソフトウェア開発でのAI利用の動向を紹介しようと思います。
各社ともに、code補間でのAI利用の段階から、coderの代替へ進むだけでなく、さらにその先を見据えているのは確かなように思います。
もっとも、ソフトウェア開発サイクルそのものをAIと統合するとい形でビジョンを明確に定式化し、「我が社がそのビジョンを実現する」と宣言している会社は、まだないように思います。
そのことは、「ソフトウェア開発サイクルのAI統合」というビジョンの現実的な到達段階を考える上では重要です。
【 「ソフトウェア開発サイクル」の複雑さ 】
「ソフトウェア開発サイクル」というものはとても複雑なものです。
codeの補間・coderの代替までは突破できたとして、そこから、ソフトウェア開発サイクルそのものをAIと統合しようというのには、大きな飛躍があります。
現在AIベンダーが行っているのは、 「ソフトウェア開発サイクル」の単純なモデルを作り、自社内の環境でのそのAI化の追求です。
「我が社のA部門のコードのXパーセントを機械生成にする」という目標設定になっているのは、そのせいだと思います。
【 ソフトウェア開発サイクルの単純化されたモデル】
ソフトウェア開発サイクルの単純化されたモデルとは、次のようなものです。何を単純化しているかについては、セミナーの別のパートで紹介します。
【 人間が果たしている役割をAgentに置き換える 】
現在、AIベンダーが行っていることは、先の単純化された開発モデルの中で、人間が果たしている役割を AI Agentに置き換えることだと思います。
【 Agentという考え方の導入は、人間を機械に置き換える抽象を可能にする 】
AI agent という考え方が注目されるのは、それが人間の役割を機械に置き換えるという構想をデザインするのに便利だからだと僕は考えています。
今回のセミナーでは、Part 2 で、AI agent という考えを理論的に整理したいと思っています。
「ソフトウェア開発サイクルのAI統合」というコンテキストのもとで、AI agent に要求される能力を考え、複数のAI Agentの協調と統合を行うために提案されているいくつかの例 (MCP, APA 等)を検討したいと思います。
【 残されている課題 】
セミナーの Part 3では、どういう課題が残されているかを考えたいと思います。
残念ながら、初めの方で取り上げたセキュリティの問題は、重要な問題なのですが、僕の力量不足もあって、今回のセミナーでは詳しく触れることはできません。
今回のセミナーでは、「ソフトウェア開発サイクルのAI統合」というビジョンの実現の上で解決しなければならない問題に問題を絞ります。
そうした問題として、大きく次の三つの問題を考えようと思っています。
第一は、現在の「単純化した開発モデル」上で行われている取り組みを、現実の複雑な開発の環境にどう拡大できるのかという問題です。それは、Part 2 でみた AI Agent の協調と統合の課題ともつながっています。
第二は、 AIで統合されたソフトウェア開発のもとでの、AIと人間の役割についてです。まず、人間はAIに何を語ることになるのでしょう? AIをコントロール人間にはどのような能力が求められるのでしょう? そうした人間の養成のスピードは、AIの進化のスピードに対応できるのでしょうか?
第三に、AIが生成するコードの正しさをどう担保するのかという問題があります。AIの能力が向上すれば、間違ったコードを生成する確率はどんどん減らせると考えるのはナイーブすぎると僕は考えています。
「ソフトウェア開発サイクルのAI統合」というビジョンの実現には、まだまだ、大きな課題が残されています。
【 セミナーの構成について 】
今回のセミナーは、次のような構成を予定しています。
Part 1: ソフトウェア開発でのAI利用の動向
Part 2: ソフトウェア開発とAI Agent
Part 3: AI Agentができること人間にできること
皆さんのご参加をお待ちしています。
【 大きな変化が起きつつある大きな問題があるから 】
「ソフトウェア開発サイクルのAI統合」というビジョンのもとに、現在進行している急激な変化は、 まだ、ほんの序曲です。それらは、大きな困難にぶつかって、おそらくすんなりとは進まないだろうと、僕は思っています。
大きな問題が予想できることは、むしろ、これから起きるだろう変化が、もっと大きなものであることを示しています。
誰かが言っています。
「時代が、それまで存在しなかった新しい問題を提起する。
そして、時代が、無数の悲喜劇を生み出しながら、それを解決する。」
blog page
https://maruyama097.blogspot.com/2025/05/5.html
マルレク「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向 」まとめページ
https://www.marulabo.net/docs/sdlc/
マルレク「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向 」のショートムービーの再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLQIrJ0f9gMcNu1_67bfQT4URZLzb1k9Wh
ショートムービー「 マルレク「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向」 」のpdf
https://drive.google.com/file/d/1cl92VZseOhCnb1mhzL8e0oBaLR03ZF54/view?usp=sharing
ショートムービー「 マルレク「ソフトウェア開発サイクルの変革とAI Agent の動向」」
https://youtu.be/JXaSWDGN5EE?list=PLQIrJ0f9gMcNu1_67bfQT4URZLzb1k9Wh
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