ベクトル空間とラティス空間の違い、再び

【 ベクトル空間とラティス空間の違い、再び 】

ラティス空間は、ベクトル空間の一種です。ただ、これまでも述べてきたように、ラティス空間は離散的な格子点の集まりですが、一般のベクトル空間は、連続的な空間を構成します。

今回も、ラティス空間とベクトル空間の違いについて触れてみようと思います。

両者が、全く違うものであれば、両者の関係はないものとして、気にかけることもないのですが。ただ、そうもいかないのです。

代表的な「ラティス問題」に「最小ベクトル問題」というのがあります。それは、「空間上に点Aが与えられた時、一番近い格子点Bを求めよ。」という問題です。

この問題で、「点A」は一般のベクトル空間に存在し、「点B」はラティス空間に存在します。二つの空間は、同じ基底、同じ空間を共有しています。

先に見た、ラティスの「基本領域」も、ラティス空間にではなく、基底を共有する一般のベクトル空間上に存在しています。

両者の違いの話に戻りましょう。

一般のベクトル空間の基底が与えられた時、いつでも、その基底を同じ空間を張る直交する基底に変換することができます。今回のセッションで取り上げるGram-Schmidtの方法は、その一般的な方法を提供します。

あるラティス空間を張る基底が与えられた時、その基底をこのGram-Schmidt 法で、直交化したとします。この直交化された基底は、元の基底と同じラティス空間を張るのでしょうか?

残念ながら、答えは「ノー」です。この方法で直交化されたラティスの規定は、一般には、異なるラティス空間を張ることになります。

(ラティスの基底が、同じラティスを張るための条件を、以前に見てきました。それを、思い出してください。)

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動画「Gram-Schmidt 直交化」を公開しました。ご利用ください。
https://youtu.be/15AoLMMr2Gg?list=PLQIrJ0f9gMcPtw-6OwIOO2rFKu_A-7OfF


この動画のpdf は、こちらからアクセスできます。
https://drive.google.com/file/d/19DKkpOF2EtkqLMwdQD8XKGMjdsD6ZAQu/view?usp=sharing

「ラティス暗号入門」のまとめページはこちらです。https://www.marulabo.net/docs/cipher3/

blog 「ベクトル空間とラティス空間の違い」のURLはこちらです。https://maruyama097.blogspot.com/2022/09/blog-post_05.html

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