LWE暗号解読の難しさ

【  LWE暗号解読の難しさ 】

LWE暗号解読の難しさは、その難しさを「ラティス問題」を解くことの難しさに「還元 reduction 」することによって証明されます。

第一部で、基本的なラティス問題である二つの問題、あるラティスが与えられた時、ラティス上の点で互いに一番近い二点を求める「最短ベクトル問題 Shortest vector problem (SVP)」と、ラティスの点以外の点 xが与えられた時、xに一番近いラティスの点を求める「最接ベクトル問題 Closest vector problem (CVP)」を紹介してきました。

このセッションでは、それらに加えて、いくつかのラティス問題を紹介します。

これらの問題は、次元が高くなると一般には解くのが難しくなります。その難しさは、計算複雑性の「複雑性」で定式化できます。 ここではラティス問題の複雑性を概観しようと思います。

ある種のラティス問題は、最も難しいNP-困難のクラスに属することがわかっています。また、ある種のラティス問題は、多項式時間で解けることもわかっています。ただ、今回のセミナーでは、さまざまなラティス問題が属する複雑性について、詳しく述べることはできません。

今回のセミナーでは、基本的に、ラティス暗号LWEが、どのようにラティス問題に「還元」されたかにフォーカスできればと思います。この還元を初めて行って、LWE暗号の解読の難しさを理論的に証明したのが、Oded Regev です。

トリビアです。

今回紹介した ラティスL のゼロでない最小のベクトルの長さを表す λ(L) について基本的な定理を定式化したのは、ミンコフスキーです。アインシュタインに数学の手ほどきをし、「ミンコフスキー空間」にその名を残している、あのミンコフスキーです。

僕は、ラティス暗号の勉強を始めるまで、ミンコフスキーがラティスの理論でも重要な貢献をおこなっていること、全く知りませんでした。 

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動画「ラティス問題と複雑性」を公開しました。ご利用ください。


https://youtu.be/bCCEwYInPeQ?list=PLQIrJ0f9gMcPtw-6OwIOO2rFKu_A-7OfF

この動画のpdf は、こちらからアクセスできます。https://drive.google.com/file/d/1Bu8tjegbC_-6Kpu0rBJyxR_5ukhxVVv_/view?usp=sharing

セミナーの申し込み受付始めました。申し込みはこちらからお願いします。https://cipher3.peatix.com/view

「ラティス暗号入門」のまとめページはこちらです。https://www.marulabo.net/docs/cipher3/

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