デカルトの積?
【デカルトの積?】
これまで、抽象的なDiagramの定義から始めて、具体的な量子回路をDiagramで表現するという話をしてきたのですが、今回の新しい節からテーマが変わります。もう一度、抽象的なDiagramの定義に戻ります。
抽象的なDiagramの定義といっても、難しいものではありませんでした。
Diagram = Box +Wire
Box = 「プロセス」
Wire = 「システム・タイプ」
というだけです。
これまで、二つのプロセスの「合成」の話はしてきました(並列合成・直列合成等)。この節では、一つのプロセスに注目して、代表的なプロセスとして、「関数」と「関係」があるという話をします。
ただ、今回は、プロセスの話ではなく、関数と関係の話をする前提として、システム・タイプの話をします。
結論から言えば、システム・タイプは、ある「集合」だと考えることができます。なら、それで終わりかというと、そうでもないのです。
【 新しいシステム・タイプ 】
こういう問題です。
あるシステムにシステム・タイプA(集合)があって、別のシステムにシステム・タイプB(集合)があったとします。二つのシステムが一緒になったシステムのシステム・タイプは、どうなるかという問題です。
これも、答えを先に言えば、この二つのシステムが一緒になったシステムでは、新しいシステム・タイプを利用できるようになります。
それを A✖️Bで表します。これを、AとBの「デカルト積」あるいは「直積」と言います。システム・タイプは集合ですので、デカルト積は、集合 A, Bから、新しい集合A✖️Bを作ります。
「デカルト積、聞いたことない」という人も多いと思います。でも、ほとんどの人は、その考え方を知っています。「デカルト座標」は、知ってますね。
デカルト座標 (x, y)は、X座標の値がx で、Y座標の値がyの点を表します。X座標が取る値の集合をXで、Y座標が取る値の集合をYとすれば、デカルト積 X✖️Yの要素は、Xに属するxとYに属するyの、デカルト座標(x, y)を持つ点と同じものになります。
数学的にデカルト積を定義すると、次のようになります。
X✖️Y = { (x, y) | x ∈ X, y ∈ Y }
この定義に現れる (x, y)は、デカルト座標と同じものです。
【 デカルト積の結合律をデカルト座標で考える 】
デカルト積が、デカルト座標と同じものであることは、次のような証明に利用できます。
デカルト積は、結合律 (X✖️Y)✖️Z = X✖️Y✖️Z =X✖️(Y✖️Z) を満たします。
このことを示すには、((x, y), z) = (x, y, z) = (x, (y, z)) を示せばいいです。
左辺の ((x, y), z)の表す点は、XY平面をひとつ選んで、そこに点(x, y) を置いて、その点をXY平面をZ軸に沿ってZ座標の値がzになるまで移動したものです。その点の座標は、(x, y, z)になります。
左辺の (x, (y, z))の表す点は、YZ平面をひとつ選んで、そこに点(y, z) を置いて、その点をYZ平面をX軸に沿ってX座標の値がxになるまで移動したものです。その点の座標は、(x, y, z)になります。
【 デカルト積の単位元をデカルト座標で考える 】
(x, y)は、X軸上のX座標がxの点を一つ選んで、その点を、Y軸にそってY座標がyになるように移動したものです。Y座標が * ということは、yの値が一つしかないということですので、Y軸に沿った移動が出来ないことを意味します。xはそのままです。(x, *) = x になります。
ショートムービー「基本的な型としての「集合」」を公開しました。
https://youtu.be/MnGT7qW8Aos?list=PLQIrJ0f9gMcPSp_fL7-LZW0yOwYXyvXtb
スライドのpdfは、次からアクセスできます。https://drive.google.com/file/d/1gBnvsXE_WHzOeIcv6IAW4E8UluMBd3BY/view?usp=sharing
このシリーズのまとめページは、こちらです。ご利用ください。https://www.marulabo.net/docs/category01/
セミナーのお申し込みは、次のページからお願いします。
https://string-diagram.peatix.com/
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