量子回路のDiagram
【 量子回路のDiagram 】
ここでは、これまででてきた概念を、順番に整理してみましょう。
1. Diagram : Box + Wire, 並列合成 ⊗, 直列合成 ○
2. 回路のDiagram : Box + Wire, 並列合成 ⊗, 直列合成 ○, Swap
3. 量子回路のDiagram : 量子ゲートを表すBox + Wire, 並列合成 ⊗, 直列合成 ○, Swap
【 抽象的な定義から、より具体的な定義に 】
ここまでの 1. 2. 3. は、Diagramの世界でのお話です。
1. は、まだ、抽象的なDiagramの定義ですが、2. になって、このDiagramは「回路」のDiagramとして、少し具体的になりました。3. の「量子回路のDiagram」では、このDiagramが、量子ゲートからなる量子回路のDiagramとして、より具体的になりました。
ただ、実際の量子コンピュータの量子回路は、もっと具体的です。以下、その実際の量子回路の特徴を、少し詳しく書き出してみましょう。
【 4. 実際の量子回路 】
・Box = 量子ゲートは、ユニタリ行列に対応する。
・Wireは、量子ビットの状態を表すベクトルである。
・量子ゲートの出力のベクトルは、ゲートに対応する「ユニタリ行列 x 入力ベクトル」で計算される。これが量子ゲートの作用を与える。
・量子ゲートから、量子回路は、並列合成 ⊗, 直列合成 ○, Swapから構成さる。
・並列合成 ⊗ された量子回路に対応する行列は、「行列のテンソル積」で計算される。
・直列合成 ○ された量子回路に対応する行列は、「行列の積」で計算される。
こうして、具体的に量子回路の定義を与えれば、回路に対応するユニタリ行列がもとまり、実際の量子回路の振る舞いを、計算で与えることが出来ます。
【 具体化は、抽象的な定義の「解釈」を与える 】
ここでは、3. の「量子回路のDiagram」の定義と、4. の「実際の量子回路」の定義の関係を考えてみましょう。
先には、1. 2. 3. は「Diagramの世界」の話で、4. は「実際の量子回路」の話だとしてきましたが、4. の定義は、明らかに、1. 2. 3. の定義を満たします。ですので、そのことは、4. の「実際の量子回路」も、Diagramとして見ることが可能だということを意味します。最初は抽象的だったDiagramの定義が、だんだん具体的になって 4. が出来たと思えば、それは当然のことです。
(実際の認識は、ふつう、具体的なものから始まります。抽象的なものから具体的なものに向かう「論理的な順序」と、具体的なものから抽象的なものに向かう「認識の順序」は、一般には一致しないのです。)
話が横道に外れましたが、3. の定義と 4. の定義の関係で、ひとつ確認したいことがあります。
それは、3. の抽象的な定義が当てはまる、具体的なサンプルを、4. が与えていると考えることができるということです。それは、3. の定義のひとつの「解釈」を、4. が与えているということです。
抽象的なものには、その具体的な実例による「解釈」が存在するというのは、とても大事なことです。そうした認識の一般化については、別の機会に詳しく触れることになると思います。
ショートムービー「量子回路のDiagram」を公開しました。
https://youtu.be/3sKPlSJClmo?list=PLQIrJ0f9gMcPSp_fL7-LZW0yOwYXyvXtb
スライドのpdfは、次からアクセスできます。https://drive.google.com/file/d/1cPL44Xe0dbmGwjx0xwZuPRqTUJJ0FKVv/view?usp=sharing
このシリーズのまとめページは、こちらです。ご利用ください。https://www.marulabo.net/docs/category01/
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