確率的推論での「認識の発展」の議論に入る前に– 前節までのまとめと補足 —
【 確率的推論での「認識の発展」の議論に入る前に– 前節までのまとめと補足 — を公開しました 】
11/26 マルゼミ「認識について考える 2 -- 認識の認識 –」の第二部「認識の発展のモデル」のショートムービーです。ご利用ください。
https://youtu.be/LP71tgM-W5g?list=PLQIrJ0f9gMcPmqWCIYjND28DLB9SwQ_eX
スライドは、https://drive.google.com/file/d/1WVW9DXtNxhqKGjxtN_zb6bATvs7paJYG/view?usp=sharing からアクセスできます。
【 Grzegorczyk と Kripkeのモデルの背景】
Grzegorczyk と Kripkeのモデルには、共通の背景があります。それは、1963年のJ.P.Cohenの仕事です。
Cohenは、Cantor以来の難問であった「連続体仮説」を、それが集合論ZFから独立であることを示すことによって、否定的に解決します。Hilbertが20世紀の数学が解くべき問題の筆頭に挙げた問題がついに解かれたのです。
Grzegorczyk と Kripkeのモデル構成の試みは、この20世紀の数学史上の大きな出来事を、どのように理解するのかという問題意識と、直接的・間接的に結びついています。
【 Grzegorczyk と Kripkeのモデルと「直観主義論理」】
Grzegorczyk と Kripkeのモデルは、彼らの論理式の否定の解釈によれば、ともに、「認識の発展」の論理が「直観主義論理」に従うことを主張しています。次の二つの式は、同じことを言っています。
これは、とても興味深いことです。
もちろんCohenのForcing methodも直観主義論理に従います。
【 情報は命題として表現される 】
Grzegorczyk と Kripkeのモデルは、もう一つ大事な共通点があります。それは、両者のモデルにおいて、情報は「命題」という形で表現されていることです。
Grzegorczykの場合は、直接的です。「情報 𝛼がアトミックな論理式𝜙を成り立たせる」のは、𝛼 ⊳ 𝜙 ⟷ 𝜙 ∈ 𝛼 の時です。
Kripkeの場合は、すこし間接的です。 「世界Xで、ある論理式Aを証明する十分な情報が存在する」は、𝜙(𝐴,𝑋)=𝑇 で表現されます。しかし、ここでも「十分な情報が存在する」という「情報についての情報」は、命題として表現されます。
【 情報は命題として表現されるのか? 】
情報が論理的な命題として形式的に表現されるというのは、ある意味自然なことのように見えるのですが、実は、認識論的には自明なことではありません。
情報は、まず、自然言語で表現され、その後、形式的な表現に変換されているはずです。(この問題は、今回は取り上げません。「言語の情報理論」が必要です。)
しかしながら、この点では、Grzegorczyk と Kripkeのモデルでは違いも存在します。
Grzegorczykの場合には、その命題は、仮説・実験を通じて「経験的」に獲得されたものです。
Kripkeの場合には、その命題の数学的証明可能性が問題となる、「数学的な命題」です。
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