ごめんなさい、チョムスキー様
【 ごめんなさい、チョムスキー様 】
今回のセッションでは、チョムスキーのMinimalist Program を紹介します。といっても、10分や15分で、チョムスキーの新しい言語理論を語ることは難しいのです。すごく雑な紹介になっています。すみません、チョムスキー様。
その上、今回のセミナーの「ことばと意味の構成性」を手がかりに、両者をFunctorial Semantics で結びつけるという枠組みには、文法理論としてのMinimalist Programは、使いにくいのです。文句を言ってごめんなさい、チョムスキー様。
では、なぜ、説明しにくい使えないものを、取り上げたのかと言えば、それは、僕がチョムスキーを好きだからです。
彼の言語理論は、昔から今も、とても魅力的です。Minimalist Programの重要な概念に「Merge」と言うのがあるのですが、Merageの獲得を、彼は、こう語ります。
「ある人の上に、その子孫にずっと伝えられる何かが起きた。あきらかに非常に短い間に、その遺伝子の変化はそのグループ内で優勢になった。それは、淘汰上の何らかの有利さがあったに違いない。ただ、それは非常に短い時間に、血縁上の小さなグループで起きた。さて、それは、なんだったのだろうか?
もっとも単純な想定は、それを疑う理由は何もないのだが、我々に起きたこととは、我々は Mergeを獲得したということだ。人は、すでに構成された心の中のオブジェクトをとって、それから、さらに大きな心の中のオブジェクトを構成することを可能にする操作を獲得したのだ。それがMergeだ。それを獲得するやいなや、人は、利用可能な表現や思考の階層的構造の無限の多様性をもつことになる。」
僕らはみな、言語能力という「超能力」を持つ、突然変異したミュータントの子孫なのです。
今年のノーベル賞を受賞したスバンテ・ペーボは、現行人類とネアンデルタール人の交雑が行われていたことを示したのですが、ネアンデルタール人は、人間のような言語能力を持ちませんでした。
きっと、ネアンデルタール人の旦那は、こう感じていたと思います。
「うちのかあちゃんは、頭の中で考えていることを、近くの仲間にテレパシーで伝えられる超能力を持っている」
もっとも、かれはそのことを、うまく表現する手段を持ちませんでした。
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