Coeckeが考えたこと

【 Coeckeが考えたこと 】

今回は、DisCoCat の出発点となった Bob Coecke らの2010年の論文を紹介します。

かれの問題意識は、明確でかつ意欲的なものです。

「意味の記号論と分散意味論は、ある意味直交する競合する理論である。それぞれに長所と短所がある、前者は構成的だが定性的で、後者は非構成的だが定量的である。」

認知科学の分野でも、こころのコネクショニスト的モデルと記号論的モデルの間に、同じような立場の違いが存在します。

Coeckeが考えたことは、この二つの陣営の対立を乗り越える道はないのかということです。

僕自身は、知能のコネクショニズム的モデルでは人間の知能を構成する重要な特徴である「数学的能力」を説明できないと考えて「計算主義的」な知能のモデルに、強く惹かれていました。その意味では、Coeckeの問題提起とその「解決」の提案は、とても興味深いことでした。今では、こうした方向が正しいだろうと考えるようになりました。

ポイントは、二つの陣営の対立を乗り越えるのに、カテゴリー論を利用しようということです。

「文法としてのPregroupが特に興味深く、我々がそれを使用する動機となったのは、カテゴリー論的な観点に立つと、それがベクトル空間やテンソル積と共通の構造を持つということである。」

このあたりは、先日紹介した、Functor SemanticsについてのLawvereの言葉と同じものです。ただ、彼は、対立する陣営が、対立はしているものの、それぞれがその「市民」である「第三のカテゴリー」を具体的に発見します。

「ベクトル空間、線形写像、テンソル積のカテゴリも、Pregroupも、いわゆるcompact closedカテゴリと呼ばれるものの例である。具体的には、Pregroupでの型の並置は、monoidalカテゴリーのmonoidalテンソルに対応する。」

「文の意味を計算する数学的構造は、意味と型の二つを組み合わせたcompact closedカテゴリーとなる。」

素晴らしい!

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「 DisCoCat -- Coecke’s original form 」 を公開しました。
https://youtu.be/Y6ltrMZPijk?list=PLQIrJ0f9gMcN2nXtvKCK4ApBaVglV8Drx

資料pdf
https://drive.google.com/file/d/1TFA9aInIz0eN7JiX_Dn10fw0CkYPy5bd/view?usp=sharing

blog:「Coeckeが考えたこと」
https://maruyama097.blogspot.com/2022/12/coecke.html

まとめページ「ことばと意味の「構成性」について 」

セミナーのお申し込みは、次からお願いします。
https://discocat.peatix.com/

参考資料
Bob Coecke et al.
Mathematical Foundations for a Compositional Distributional Model of Meaning https://arxiv.org/abs/1003.4394 








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