3/25マルレク「量子コンピュータを やさしく理解する三つの方法」講演資料
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図は、アリスに「量子テレポーテーション」を、やさしく教えようとするドゥードゥー鳥の先生です。
以下、資料の「はじめに」から
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はじめに
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はじめに
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量子コンピュータに対する関心の高まりの中で、一見近寄りにくくみえるこの素材を、多くの人にわかりやすく理解してもらおうとする模索も活発に行われている。小論は、その中から三つの試みを紹介したものである。
最初に紹介したTerry Rudolphの本は、著者自身が、「15歳の時の自分に向けて書いた」と言っているように、中・高生の読者をも意識したものだ。その特徴は、一切、数式を使わないところにある。
古典的な論理ゲートとの対比で、ボールを入れるとボールが出てくるPETEという名前の不思議なボックスの振る舞いを通じて、量子ゲートの働きを直感的に理解させようとする。
Terry Rudorpfの本で興味深いのは、「エンタングルメント」のトピックを、真正面から取り上げていることである。「エンタングルメント」という言葉や概念は用いていないのだが、彼の本の「超能力者ゲーム」は、「エンタングルメント」の不思議さを、中高生にもわかる形で見事に表現した出色のものだと思う。
二番目に紹介するUmesh Vaziraniのアプローチは、高校生・大学生をターゲットにしたものである。このアプローチでは、数学が必要になる。ただ、ここが重要なことなのだが、そこで利用される数学は、高校生でも理解できる、ベクトルと行列の演算を中心とする初歩的な線形代数である。
線形代数にも難しい部分があるのだが、量子コンピュータを構成する量子ゲートの基本的な働きを知るには、難しい数学は必要ないのだ。実は、こうした「わかりやすさ」は、これまで見落とされてきたことである。
線形代数にも難しい部分があるのだが、量子コンピュータを構成する量子ゲートの基本的な働きを知るには、難しい数学は必要ないのだ。実は、こうした「わかりやすさ」は、これまで見落とされてきたことである。
Vaziraniのアプローチの特徴は、広い分野からなる難しい量子力学から、基本的な量子の情報理論を分離して取り出すことである。そして、量子の振る舞いの基本原則を、公理化して単純化し、そこから出発する。
量子情報理論にフォーカスした、Vaziraniのアプローチは新しいものである。量子論をわかりやすく理解しようと思ったら、古い量子力学の体系から学び始めるのではなく、新しいフレームで学び始めるのが一番である。
筆者が、この間展開している「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論」のシリーズは、基本的には、Vaziraniのアプローチに依拠したものである。
量子論は100年以上の歴史を持ち、フォン・ノイマンの体系化からも80年以上経っている。量子論は、ある意味、古い学問でもある。しかし、量子論は、どんどんその姿を変えている。残念ながら、物理の「専門家」でも、そのことに気づいていないという。(小論の三番目のepigramでのVlatko Vedral の「驚き」を見るのがいい)
小論が紹介する第三番目のBob Coeckeらのアプローチの背景には、こうした量子論自体の大きな変化がある。彼が対象としているのは、大学生である。あるいは、量子論をある程度理解している人を対象にしている。なぜか? これまでの量子論理解の枠組みは、量子論の新しい展開の前には、必ずしも「わかりやすい」とはいえないことが明らかになってきているからだ。
そのことは、Bob Coeckeが物理学者に向けて問いかけた次のような言葉を見ればはっきりする。
「エンタングルメントが発見されてから、物理学者がその重要な帰結である量子テレポーテーションを発見するまで、なぜ60年もかかかったのだろうか?」
彼の答えは、「量子の情報過程とこの構成を記述する言語が不十分なものだったから」というものだ。それは物理学者にとっても旧来の枠組みが、新しい量子現象を理解するには、「わかりにくい」ものだったということに他ならない。
彼は、新しい「言語」として図形(Diagram)を使うことを提案する。数式を使うことをやめ、図形を使って、図形に対する直観に依拠して量子過程を「絵解き」しようとする。その方が「わかりやすい」はずだと。
Bob Coeckeの主要な関心は、「エンタングルメント」と「量子テレポーテーション」を、わかりやすく理解させることにある。「エンタングルメント」は、cup状の一本の弧で表現され、「量子テレポーテーション」は、連続的に変形する図形が、ついには一本の直線になることで説明される!
小論のタイトルを、「量子コンピュータをやさしく理解する三つの方法」としたのだが、実は、ここで紹介した三つの方法は、その対象読者も、「わかりやすさの」狙いも、それぞれ異なっている。Terry RudorphとBob Coeckは、できるだけ数式を使わないようにしているのだが、その理由は異なっている。Vaziraniは数式を使うのだが、それにも理由はある。
小論が伝えたいことは、様々なレベルで「わかりやすさ」の探求が始まっていることと、それにはそれぞれ理由があるということである。また、こうした変化は、新しい時代の始まりの予兆だと僕は考えている。
「わかりにくさ」の根源ははっきりしている。量子の世界は、直感とははなれた不思議な世界だからである。ただ、いずれ我々は、その不思議な世界を、科学の力で捉えて、技術やビジネスに取り込んでいくだろう。
量子ビジネスの立ち上がりの時期を予想するのは難しいのだが、それは、明日でも来月でもないのははっきりしている。ただ、それを準備する時間があるのは幸運なことだと思う。それを今からドライブするのは、まず、皆さんの「知的好奇心」だと、僕は考えている。
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