次回マルレクのお知らせ

次回のマルレクは、6月3日、渋谷のGMOさんで開催です。MaruLaboが事務局を務める最初のマルレクになります。テーマは「量子暗号と暗号通貨」です。
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現在では、企業の秘密情報も個人のプライベートな情報も、ネットワークをまたいで共有されることが普通に行われています。そうした情報が、無関係の(ある場合には悪意のある)第三者に漏れないように、暗号化技術が利用されています。現代のネットワーク社会の安全性を支える基本技術の一つが、暗号化技術です。
今回のセミナーでは、最近関心が高まりつつある量子情報技術と暗号化技術の関係にフオーカスしたいと思います。セミナーの後半では、暗号通貨の未来形としての「量子通貨」の話をしようと思っています。セキュリティ技術やブロックチェーン技術に関心のある方の参加を歓迎します。
量子情報技術と暗号化技術の関係は、二つの面から考えることができます。一つは、従来の暗号化技術を「破る」技術としての量子情報技術です。もう一つは、従来の技術(量子コンピュータを含めて)では達成できない「破られない」暗号化技術への量子情報理論の利用です。
前者については、量子コンピュータを使って素因数分解を高速に行うショアのアルゴリズムが有名です。ただ、1994年のショアの発見から25年たった現在も、現在利用されている暗号を破るような量子コンピュータは作られていません。それにもかかわらず、暗号化技術の最前線では、NISTもNSAも「量子耐性」を持つ暗号化技術の開発に余念がないように見えます。
後者の「量子暗号」については、BB84と呼ばれる、秘密キーの共有プロトコルを紹介しようと思います。もちろん、先のマルレクでも取り上げた「量子テレポーテーション」等の量子通信技術がベースになるのですが、RSA暗号を解く量子コンピュータより一足先に実用化されるのではと、僕は思っています。
量子通貨については、2016年のScott Aaronsonの次の講義ノートの概要を紹介できたらと考えています。
Scott Aaronson et al.
"The Complexity of Quantum States and Transformations:
From Quantum Money to Black Holes"
https://arxiv.org/pdf/1607.05256.pdf
今回、冒頭にブラックホールの写真を掲げたのには、意味があります。彼によると、量子通貨の安全性の問題は、ブラックホールの情報問題と言われているものと深い関係があるということです。
はてさて、どういうことになるのやら。

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