いろいろまちがいはあるもの
今度のマルレクで、量子の世界の不思議さをあらわす例として、「マッハ・ツェンダーの干渉実験」の話をしようと思っている。
この実験は、前世紀末におこなわれたもので(ごめん、前々世紀末だった)、二つの鏡と二つのハーフ・ミラー(半分の光を通し半分の光を反射する。「ビーム・スプリッター」ともいう)を組み合わせた実験である。
不思議なことに、「分身の術」を使ったように、一つの光子が同時に二つの道を通っているように見えるというもの。
以前は、難しい実験だったらしいが、今ではレーザー光源が使えるので簡単にできる。実験セットが売られている。高校生にぜひ見せたい実験である。
この実験、量子の不思議な世界の扉を開いた歴史的にも有名な実験なのだが、マルレクの準備で調べていたら、意外だったのは、あまりきちんと説明されていない。というか、間違った説明がされているのを見つける。
ひとつは、Vlatko Vedralの“Introduction to Quantum Information Science” Oxford Graduate Text https://goo.gl/aPaF8L の図。出力が90度間違っている。
この本は、量子情報理論のいい教科書で、僕もずいぶんお世話になったのだが、読み飛ばしていて気がつかなかった。よく見ると、簡単な計算を間違えている。
もう一つは、Barton ZwiebachのMITの公開ビデオ、“L2.4 Interferometer and interference.” MIT 8.04 Quantum Physics I, Spring 2016 https://goo.gl/nN4NLw
同じ二つのビームスプリッターに、異なる作用(行列)が割り当てられているのがおかしい。講義の中では、鏡は、何の役割も果たさないと言っているは間違い。
僕の考えでは、鏡での反射が光子の状態を、虚数 i 倍分だけ変えるというのが、この実験のミソ。要は、この実験は、光子という量子の状態は、実数ではなく複素数で表されるということを示す実験なのだと思う。
詳しくは、3/25 マルレクで。https://easyq.peatix.com
もちろん、僕も、間違えているのかも。あは。
もちろん、僕も、間違えているのかも。あは。
マッハ・ツェンダーの干渉は、現在では、光通信のもっとも基本的な原理として、日常的に利用されている。OxfordやMITの物理の先生が凡ミスを犯しているのは皮肉なことだが、現場のエンジニアは、こうしたミスはしないと思う。
量子論を、みんなが理解できるようにするというのは、科学にとっても技術にとっても、きっと大事な課題なのだと思う。
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