カルロ・ロヴェッリ The order of Time

Amazonから、注文した覚えがないのに「注文受け付けました」というメールが来て、なんのことかと不思議だった。以前に出版予定の案内を見て「出たら買います」と予約していた本だった。単に、予約していたこと、僕が忘れていただけだった。
カルロ・ロヴェッリの「時間の順序」(「時の秩序」かも。 "The order of Time" https://goo.gl/jRJV9m) この本、とても面白い。今年読んだ本では、文句なしに一番。
カルロ・ロヴェッリは物理学者で、リー・スモーリンとともにループ量子重力理論の両雄だ。スモーリンが、一般の読者向けに、しかも、現在の物理学の「主流」のスーパー・ストリング理論を辛口に批判する本を立て続けに出して、話題をよんだのに対して、ロヴェッリの方は、地味で硬い学者という印象が、僕には強かったのだが。
ただ、歳をとってから、ロヴェッリは、はじけ出す。物理・哲学・文学・宗教の分野を縦横無尽・自由自在に行き来して、なかなかいい感じの、はじけっぷりだと思う。今では、スモーリンの方が硬く感じられるくらいだ。(この「両雄」の「時間」の捉え方、すこし違うこと、僕は気になっている。)
この本の主題は、第二部「時間のない世界」第八章「世界は、物ではなく出来事から出来ている」にある。時間は、物理学的には、本当は存在しないという物理学的主張なのだが、そのことが全く数式を使わずに展開されている。この本の中に出てくる数式は、ΔS ≥ 0(エントロピーは増大することを表す)一つだけである。
こんな感じ。
「世界に ...「時間」という量が存在しないことは、世界が固まった不動のものであることを意味しない。逆である。世界は、変化が ... 普遍的なのである。出来事の世界は、英語のように、秩序だった形式を取らない。それは、カオスのように群れ集まる。まるでイタリア語のようだ。」(ロヴェッリはイタリア出身である。)
「物と出来事の違いは、物は時間の中で永続するのに対して、出来事は限られた間だけしか続かない。石は、典型的な「物」である。石については、我々は、それが明日もそこにあるだろうかと問うことはできる。逆に、キスは「出来事」である。あのキスが明日もあるだろうかと問うことは、ナンセンスである。世界は、キスのネットワークで出来ていて、石のネットワークで出来ている訳ではない。」 (アハハ!)
雲も海も川も風も虹も音楽も言葉も、物ではなく出来事だという。そして、人間も!(そりゃそうだ。)
こうした世界の見方は、「万物は流転する」という古代ギリシャ以来の弁証法的な見方でもあるのだが、興味深いのは、それは、我々には親しみやすい仏教的な世界観と多くの共通点を持つことだ。
ロヴェッリは、仏典から「ミリンダ王の問い」https://goo.gl/bpB9pX を詳しく引用し、仏陀の「生老病死」の四苦、さらには八苦・「執着」まで、紹介している。第三部「時間の源」第十二章「マドレーヌの香り」(これは、プルーストだ!)
内容は深いのだが、表現はあくまでも平明である。これで、最新の量子重力理論の世界観が学べるのなら、こんなにいいことはない。
「楽しい物理学」もできるかも。 
AMAZON.CO.JP
The perfect graduation gift"Meet the new Stephen Hawking . . . The Order of Time is a dazzling book." --The Sunday TimesFrom the bestselling author of Seven Brief Lessons on Physics, a concise, elegant exploration of time.Why do we remember the past and not the future? What does it mean...

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