AIの問題は解決したのか? Facebook AI チーム

"Artificial Tasks for Artificial Intelligence" https://goo.gl/GGVMc6
FacebookのAIチームの問題意識と現在の取り組みがよくわかる。Deep Learningの手法のこれまでの「成功」を踏まえて、次の課題を探ろうとしている。
「AIの問題は解決したのか?」 という問いに、「そうではない。巨大なデータの統計を、賢く利用することに成功した。」と述べ、「推論の能力は制限的」「概念は統計ではない」と述べる。妥当な認識だと思う。(図1)
彼らが、現在、取り組んでいることの例をあげよう。(図2)"TOWARDS AI-COMPLETE QUESTION ANSWERING : A SET OF PREREQUISITE TOY TASKS" https://goo.gl/nIHbjF
これだと見にくいか。こんな感じ。
Task 7: Counting
 Daniel picks up the football.
 Daniel dropped the football.
 Daniel got the milk.
 Daniel took the apple.
How many objects is Daniel holding? A: two
Task 8: Lists/Sets
 Daniel picks up the football.
 Daniel drops the newspaper.
 Daniel picks up the milk.
 John took the apple.
What is Daniel holding? A: milk, football
Task 9: Simple Negation
 Sandra travelled to the office
 Fred is no longer in the office.
Is Fred in the office? A:no
Is Sandra in the office? A:yes
Task 10: Indefinite Knowledge
 John is either in the classroom or the playground.
 Sandra is in the garden.
Is John in the classroom? A:maybe
Is John in the office? A:no
小学生の国語の問題レベルだ。これがなかなか難しいのだ。
AIについての情報で、注意しなければならないのは、「あれもできた」「これもできるらしい」という情報より、何ができていないのか、何が難しいかをきちんと考えることだ。また、Deep Learningの手法が、有効かどうかの問題もある。
GoogleのDeepMindのDNCがロンドンの地下鉄の経路探索に成功したというのだが、我々は、日常的にスマホで経路探索している。そもそも、グラフ上の最小経路探索のアルゴリズムは、60年以上前に、ダイクストラが見つけている。現在は、Bulk Synchronous Parallelの計算モデルを使ったGoogleのPregelやそのオープンソース版のGiraffで大規模なグラフ処理が可能である。こっちの方が、データのハンドルもしやすく、処理も速く結果も正確である。
GoogleのDNCがエライのは、汎用のフレームワーク上に、こうした最小経路の推論エンジンをのっけて見せたことである。これは、「機械での推論の実行」という目標の元で「難しいこと」に挑戦しているのがスゴイのであって、検索結果がすごいということでも、将来の路線探索がAIに取って代わるということでもないと思う。
(ちなみに、DNCのサンプルをよく見れば、ロンドン地下鉄の中心部分だけだということもわかる。東京の地下鉄は、複雑で、もっと難しいぞ。)




コメント

このブログの人気の投稿

マルレク・ネット「エントロピーと情報理論」公開しました。

初めにことばありき

人間は、善と悪との重ね合わせというモデルの失敗について